五感と記憶は、結びつきやすいもの。そのなかでも記憶を強く刺激するのは、嗅覚だと感じているのですが、どうでしょうか。

 今年は迷子気味の四季模様で、気温に振り回されてばかりの日々が続いています。そんななかでも、秋の代表と言っても過言ではない金木犀の香りは、しっかり街へ訪れているようです。
 寒さに弱い金木犀。その生態から、雪国の地域などでは滅多にお目にかかれません。代わって秋を担う香を問われるなら、イチョウでしょうか。より正確に指すならイチョウの実である銀杏です。

 街路樹にも多いイチョウは、昔からよく目にする、日常的に馴染みある植物でした。秋になり色をつけたそれらは、見事な山吹色の絨毯を織り成します。
 そして、鮮やかな自然の絨毯は、地面に落ちる同じく山吹色の銀杏をすっぽり隠すのが上手です。その結果どうなるのかというと、誤って踏み砕くこと多々。ほぼイチョウで埋め尽くされている歩道を注意深く進んでも、全て見切ることはなかなか至難の業なのです。
 
 そんなことが毎年あるものですから、すっかり私の秋は銀杏に脅かされつつあったのですが、それも過去形。
 とある紅茶に出会ってからは、秋の風が吹くと、甘く香ばしい紅茶の香りが楽しみの一つとして浮かぶようになりました。



 オータムナルと呼ばれる、秋に摘まれる紅茶。黄金色の水色(すいしょく)は、華やか且つどこかクッキーのような甘さも感じる香りです。ずっと吸い込んでいたくなります。
 そして、芋・栗・南瓜の秋三大スイーツとも相性抜群!おいしい×おいしいは、幸せの連鎖につながりますね。
 


 今年のオータムナルは、どんな風にたのしませてくれるのでしょうか。その年の天候や環境に左右される完成度というのは、実際に出会うその時までわくわくさせてくれます。ワインのボジョレーヌーヴォーなどもその類いですよね。
 そういった変化に心躍るのは、気持ちに余裕があるときと聞きます。そこで逆に、余裕を持ちたいときに意識を傾けてみるのはいかがでしょうか。
 まずは、いつもの通り道から。
 あるいは、日常の一杯から。
 
(コノハト茶葉店/小野更紗)

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