晴天と吹雪が交互にやってくる雪国ではまだまだ先になりそうですが、どうやらもう鶯の声が届き、春が訪れ始めている地域もあるようですね。
 春告げ鳥と呼ばれる鶯のように、季節の変わり目を感じられるもの。私にとってはそれが、本山香駿という茶です。というのも、桜のようなふんわりと華やかで落ち着く香りに、この茶をお供にぶらりと足を運んだ花見を思い出すのです。

 毎年の春祭り。出店をまわるのもよいけれど、ふとせっかくなのだから桜の下で茶を淹れてみようかと思い立ったのがきっかけでした。
 茶筒から茶葉を移し、持ち運びしやすい形のティーポットにお湯を注ぐ。ボトルに入れてきたぐらぐらの熱湯だったものは、ここまでの道のりでちょうど良い温度に。

 いつもはおいしいお茶を飲むために、蒸らし時間もきっちり計りますが、今日は出先でのいわば個人出張茶房なので、まあこれくらいだろうという感覚で淹れてみた本山香駿は、まあまあちょうどよいかんじ。
 飲み込んだあとも鼻を通ってふわりと広がる柔らかい香りと、桜の木がひらひらと花弁を舞い上がらせながら運ぶ春の香を浴びて、全身で桜を満喫できた記憶は今でも鮮明です。